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秘密などない

むしろ自警団の気持ちになってみるということ

漫画家の鈴木マサカズ先生がよく映画のことをお書きになっていて興味深く拝見しているのであるが、『福田村事件』というタイトルを流されていた。

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fukudamura1923.jp

単純にまず画がよさそうで観たいなと思ったのだけれど、不勉強にして、関東大震災時になぜそんな虐殺事件が起こったのか、その背景に何があったのか、ピンと来てないところがあるので、その意味でも是非観ておきたい。

もちろん、レイシズムがそうさせたと頭ではわかっているのだけれど、現代の温和な(つもりの)私には、レイシズムというだけでそんな酷い集団虐殺まで至るのだろうか…という疑問があるのである。

映画は、そうした、知らないことの追体験をさせてくれる。

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で、YouTubeで映画『福田村事件』がテレビで特集されたのがいくつか上がっていたので、仕事中にそれをかけていたら、だんだん、関東大震災そのものについての動画がサジェストに上がってきて、ついに恐ろしい一本に出くわした。

関東大震災を現代報道風に再現した動画である。

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とんでもない恐怖に襲われてしまった。

私が知っている震災は中越地震東日本大震災で、とりわけ中越地震のときは現地にいた。当時の恐怖や不安、混乱が、まざまざと思い出され、まるでそのさなかにいるような気がした。フィクションと現実の区別がつかない気持ちになった。

ここで、ふと気づいたのである、こんな中で正気を保つのも大変だったろうと。

記憶違いだったらアレだが、関東大震災の虐殺は自警団が率先しておこない、また、警察も突き出された罪のない人を殺したらしい。

情報のままならない昔といえ、いくらなんでも、そんな理性のないことをよくするなぁなどと、ある意味呑気に考えていたのだけれど、震災のストレスは理性など吹っ飛ばすのである。

そこにレイシズムが加わったら。ようやく想像の取っ掛かりが出てきた。

余震続きで何日もろくに眠れないと本当に神経が逆立つ。まして便利な暮らしに慣れた現代人に、ライフラインの壊滅は耐え難い。何日も何日も、水も火もままならないストレスは忘れられない。そしてそのストレスから逃げられない。究極のメンタルコントロール、アンガーマネジメントが試される。私はそうだった。

強い不安や不満を関係ない他の物事に転嫁し、攻撃することで憂さ晴らしをはかるって、平時でもよくあると思っていて、私に言わせればネットなどそれだらけである。そういうことの極めつけだったのではないかと想像する。

関東大震災の虐殺はレイシズムの問題であるとともに、災害時のデマの問題でもあると思っている。

さすがに今どき「◯◯人を殺せ!」とはならないと信じたいのだけれど、もっと軽いデマだったらどうだろう。「食い詰めた外国人技能実習生が強盗をして回っている!」。少し説得力を感じてしまわないだろうか。

あるいは、悪いデマでなくとも、良いデマ(?)もあるかもしれない。あそこはまだ水が通ってるとか。

いずれにせよ、聞きかじった情報にすがってしまいかねないな、と危機意識が芽生えたのである。“予習”できただけマシだと思いたい。

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けれど、私は現代人として、震災経験者として、災害時になにより大切なのは助け合いの精神と思いやり、そしてユーモアであることを知っている。ヒリついた神経をなだめるのも人なのである。

関東大震災時の虐殺や差別は、明らかに間違いであったし、むしろ状況を悪化させる意味のない行為だったと言える。